初回
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この時間の知床斜里駅は、上下線に網走行きと釧路行きがそれぞれ同時に入線し、発車していく。しかも、どちらも同名の快速「しれとこ摩周号」である。そのため、乗り間違いには十分注意する必要がある。
私はこのとき、まじは網走行きの快速に乗り浜小清水駅へ移動し、その後は臨時列車も活用しながら釧網本線の駅をめぐることにしていた。
「次は、中斜里です」
列車は動き出すと、次に止まる駅の案内を始めた。嫌な予感がした。
なんと私は、誤って釧路行きの列車に乗ってしまったのだ。迷っている暇はなかった。すぐに次の中斜里駅で降りた。
今後の計画を立て直すため、まずは時刻表を確認した。知床斜里から乗ってきた列車は、11時17分発の快速。戻る列車は、5時間以上開いて16時27分発。これは大変なことになってしまった。
とはいえ、先ほどの列車は、知床斜里を11時11分に発車し、この駅まで5~6分で到着した。ということは、歩いて戻ることも可能なのではないだろうか。
調べてみると、知床斜里駅までは約5kmの道のりであることがわかった。そこまで行けば、網走行きの臨時列車も走っている。5時間ここで待つよりは、望みがある。
1本でも早い列車につながるかもしれない。そのために、すぐに歩き始めた。
何もない雪道をひたすら歩く。車はまれに通るが、歩行者は一切いない。
気温も氷点下だった。心まで冷え切ってしまいそうだった。
さらに、雪道というのは、思っていたより足にも負担がかかる。
猿間川という川を渡る。小さい川だが、透明度は高い。
牧場があり、牛を見ることもできた。
3kmほど歩くと、市街地が広がってきた。
雪かきをする人の姿も見られた。
再び釧網本線の線路が見えてくると、ゴールはすぐそこである。
線路沿いに歩いていると、国鉄と書かれたコンテナを発見した。
そして12時30分ごろ、知床斜里駅に戻って来た。時刻表を見ると、2時間後に網走行きの臨時列車が出るものの、これに乗っても網走で特急に接続できないことが分かった。それでは急いでも仕方ないので、この列車をきっかけに駅をめぐってみることにした。
しかし何といっても、知床斜里駅は暖房とネット環境が完備されている。それだけでも、1時間以上歩いた甲斐があるというものである。
つづく