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2022年2月12日(土)
富良野の朝は過酷だ。いくつも重ね着をして、速足で歩いていても、手先や足先から体温が逃げていく。
街路樹にも霧氷が付着していた。
宿から5分ほどで富良野駅に到着した。
暖房が効いた温かい待合室に避難し、列車を待った。
駅は既に活動を始めているが、利用客の気配はほとんど無かった。
富良野線の始発列車に乗り、隣の学田駅へ行くことにした。このわずかな時間で、手がかじかみ、カメラのシャッターを押すこともままならなくなった。
学田駅で下車。列車を降りた瞬間、痛みすら感じる寒風に吹かれた。
この駅の待合室は、完全に吹きさらしの状態である。気温は氷点下20度。とても列車を待つことができる環境ではない。
乗ってきた列車を見送った。気温が低いため、排煙がよくみえる。
隣接している踏切から、駅を眺めてみた。板張りのホームと、物置小屋を利用した待合室。きわめて質素な駅である。この素晴らしい佇まいには、寒さを忘れて陶酔してしまった。やはり駅は、なるべく何もないほうがいい。
遠くから汽笛が聴こえてきて、その後ヘッドライトが見えてきた。時間通りに列車が来た。雪に埋もれた秘境駅において、これほど安堵する瞬間はほかにない。
この列車で富良野に戻った。
富良野で根室本線に乗り継ぐことができる。短時間で乗り換えを繰り返し、車内と外の気温差で身体がおかしくなってしまいそうだった。冬の北海道での駅めぐりは、時間帯を考慮する必要があると反省した。
一方ここでは、過酷な環境であればあるほど、自然は美しい姿を見せる。
心が洗われるような車窓を眺めながら、この日も旅が始まった。
列車は全てが氷に閉ざされた世界を行く。木々や動物は、ほとんど眠りについている。
東鹿越に到着し、代行バスに乗り継ぐ。この駅が賑わうのは、この一瞬だけである。
このバスの車内では、大方の時間を居眠りして過ごしてしてしまった。そのためこのときは、狩勝峠の車窓も見逃してしまった。
つづく
つぎ