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2023年9月7日
中国山地の山々から降りてきた三次の空気は綺麗に澄んでいて、朝には、土や水や緑のにおいが感じられる。それを胸いっぱいに吸いこんで、4日目が始まった。
駅前を流れる小川を覗くと大きな鯉たちに占領されていて、やや興ざめてしまった。
気を取り直して、当駅からの芸備線上り始発列車で備後落合へ向かう。広島東洋カープの真赤なラッピングのディーゼルカーが来た。何かと鯉と縁が深い駅である。
今回も多くの学生を乗せて、単行のディーゼルカーは山を登っていく。
1時間半ほどで備後落合駅に到着した。2日前ここに来たときは接続が良すぎて降りられなかったため、今回は駅周辺を散策してみることにした。
備後落合駅の駅舎はシンプルながらも立派なものである。かつての一大ターミナルとしての風格を感じさせる。
駅前を流れる小鳥原川のせせらぎも涼しげで気持ちがいい。列車の本数はきわめて少ないし、車通りも多くはない。せっかくの「秘境のターミナル駅」なので、ぜひこの早朝の時間帯に訪れてほしいと思う。
駅舎に戻ると、ほどなくして一人のご年配の男性が現れ、駅構内にいる旅行客に対して「駅の解説をしますから、よければ集まってください」と言い始めた。話を聞いていると、この方は永橋さん(愛称ノリちゃん)という方で、以前は国鉄の機関士を務められていたそうである。
永橋さんは三江線の廃止を受け、次は芸備線や木次線が廃止されてしまうのではないかという危機感から、当駅で解説や整備のボランティアを行っているとのこと。ネット上には書けないようなお話も教えてくださり興味深かった。
続いては駅敷地内の遺構を見てみる。これは、かつて蒸気機関車の燃料となる石炭を置いておくためのタンクのようなものがあり、その土台の跡だという。
転車台も残されており、かつては交通の要衝であったことが改めて感じられる。
さて、永橋さんの見送りで発車する木次線の始発列車に乗り、今度は山陰方面へ抜けていく。
出雲坂根駅では木次線名物の三段式スイッチバックを楽しめる。この路線は2回も進行方向を変えながら、険しい勾配を克服している。
亀嵩駅では事前に予約していた「そば弁当」を受け取った。コシのある蕎麦と香り高いお出汁が絶妙なハーモニーを奏でている。卵とトロロもたくさん入っていて、豊かさを感じられる良い駅弁だと思う。
お蕎麦を食べ終わるやいなや、名物の観光列車「奥出雲おろち号」とすれ違ったので撮影してみた。
終点の木次駅で下車。当駅周辺は民家や店舗も多く、雰囲気が一気に変わった。
つづく